会津の三大茶屋料理といえば、旧滝沢街道「強清水の天麩羅」、東山街道「お秀茶屋の田楽」、そして旧日光街道「一ノ堰の棒たら」があげられます。
今回は白虎隊隊士や新選組・土方歳三も食べたと伝わる「お秀茶屋」をご案内します。
お秀茶屋とは

お秀茶屋は延宝年間(1673~81年)今からおよそ350年前、第4代将軍・徳川家綱の時代に創業された老舗茶屋です。
当時このあたりは河原になっており、会津藩士専用の処刑場として使われていました。処刑場に向かう罪人をこの茶屋のお秀婆さんが、今生最後の食事として味噌をつけて焼いたモチと清水を振舞っていたそうです。

処刑場の矢来(柵、囲いのこと)の前だったことから「矢来の前」→「奴郎ヶ前」と変化し、この茶屋近辺を「奴郎ヶ前」というようになったそうです
偉人たちが愛した田楽
土方歳三とお秀茶屋
戦いで負った傷の療養をするため、会津に逗留していた土方歳三ですが、その湯治先である東山温泉に向かう街道沿いにあるのがこの茶屋でした。
また茶屋の裏山には、土方が建てたという近藤勇の墓のある天寧寺があります。天寧寺に隣接する愛宕神社でお話を伺ったところ、当時の宮司が「近藤の首(遺髪とも)を持った土方が裏山へ向かうのをみた」と同社で伝わっているそうです。

峠下の腰掛け茶屋であったお秀茶屋近辺に何度も訪れていたことでしょう。湯治の帰りや墓の建立の際に、この茶屋に寄って一服していたのかもしれませんね。
手塚治虫ら著名人のサイン色紙

店内には、鉄腕アトムで有名な漫画家・手塚治虫氏の直筆イラストが飾られています。

他にも「上を向いて歩こう」の作詞家・永六輔氏、「男はつらいよ」などで知られる山田洋次監督、画家・山下清氏などのサインがずらりと並んでいます。中尾彬さんと撮った写真なども飾られていました。
伝統の味・甘味噌田楽

メニューは鴨居に貼ってあるのですが、よく見るとカレンダーの裏紙を利用しているんです。老舗なのに気取らない、この親しみやすさがなんとも居心地がいい。
胡桃餅やかけそばなどにも惹かれますが、やはりここは定番の田楽セットがおすすめです。
注文してから炭火で1本1本丁寧に焼き上げてくださるので、少し時間がかかります。

伝統の味を守る自家製秘伝の甘味噌がたっぷり塗られています。餅2本、厚揚げ2本、ニシンとこんにゃくが1本ずつ。熱々なのでやけどに注意して、竹串にかぶりついていただきます。


この焦げと照りが食欲をそそる!
味噌の甘じょっぱさがいい塩梅で、手が止まりません。特にこのお餅。「今までこんなもちもち食べたことない!」といっても過言ではないくらい、もっちりもちもちです。冷めると固くなるかと思いきや、最後の方に食べても柔らかくて美味しいんです。あと10本食べたい。
外カリ中ジュワの厚揚げとニシンの香ばしさも堪りません。秋はこんにゃくが里芋になるようで、これがねっとりほくほくで美味しい。あと20本食べたいところですが、このセットだけで結構ボリューミーなので満足感と幸福感で満たされます。

春には縁側から桜が見えるので、外で食べるのもまた一興ですね。

お秀茶屋へのアクセス
お秀茶屋へは、バス停・奴郎ヶ前が最寄りです。
観光には会津若松市内を周遊する巡回バス、「あかべぇ(右回り)」と「ハイカラさん(左回り)」が便利です。
若松駅前からだと「あかべぇ」に乗って約9分で奴郎ヶ前に着き、バスを降りて進行方向に少し歩いたところにお秀茶屋があります。
お秀茶屋まとめ

のれんをくぐると、「いらっしゃいませー、お好きな席へどうぞー」というご主人に迎えられます。囲炉裏から立ち上がる煙やパチパチという味噌が炭に落ちる音が心地よく、ついつい長居してしまいそうになる。今も昔も味はもちろん、そういった心地の良さを含め多くの人を魅了してきた茶屋なのだと思います。
偉人たちも食べた田楽をお店の雰囲気も含め、味わってみてはいかがでしょうか。
福島県会津若松市東山町石山天寧308
ハイカラさん・あかべぇ「奴郎ヶ前」から徒歩1分
営業時間 10:00~17:00 不定休